肝臓病と食事
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胃腸病と食事の関係
管理栄養士 鈴木久美子の「健康の泉」



生活習慣病の中では死因の第4位

肝疾患は 日本人の死因の中では第8位ですが 生活習慣病だけについて言えば癌・心臓病・脳卒中に次いで第4位を占めています。 また癌だけをとりあげると 男性では胃ガン・肺ガンについで肝臓癌が第3位を占めています。 肝臓は「沈黙の臓器」と言われ 病気の発現が遅いことや ウィルス性肝炎に感染しても本人が気が付かずにいることなどから 最近では増加傾向にあり「21世紀の国民病」とまで言われています。

肝臓の働きは?
肝臓は 最も重い臓器で 1~1.5kg もあり 「肝心かなめ」と言われるように 人間の体の中でとても重要な働きをしています。 胃や腸で消化された栄養分は 消化管壁に巡らされた「門脈」によって吸収され 肝臓へ送られます。 肝臓では それを分解・合成・貯蔵して体が利用しやすい形で随時供給しています。

そのほか 脂肪の消化吸収に欠かせない胆汁の生成・アルコールや薬の代謝・解毒をおこなうなど人体の中で まさに「化学工場」としての働きをしているのです。

肝臓病の原因となるのは?
肝臓病の主な原因となるのは 「ウィルス」「アルコール」「薬」の3っです。 肝臓病の代表は「アルコール性肝炎」だと誤解している人もいますが 実は原因の多くは A型からなんとG型まである「肝炎ウィルス」によります。 特に C型慢性肝炎の患者は日本だけでも 120万人も存在すると考えられています。 慢性肝炎は 以前は不治の病と言われていましたが 「インターフェロン」療法などにより治る時代になってきています。

しかし 一方では「アルコール」による肝障害が増えているのも事実で アルコール性肝疾患は「脂肪肝」によってはじまり さらに多量に飲み続けると「アルコール性肝炎」・「肝硬変」へと進展します。

アルコール性肝疾患と脂肪肝
日常的に 日本酒で4合・ビールで大瓶4本以上を毎日飲み続ける人に 「脂肪肝」は多くみられます。 この脂肪肝とは 脂肪の取りすぎで起こるような印象を持ちますが 実はアルコールの多飲で容易に起こってしまいます。 最近までは 「アルコール性肝炎にさえならなければ 脂肪肝までは問題がない」という考え方が一般的でした。 しかし 脂肪肝が起きるような食生活をしていると肝臓だけでなく 全身に脂肪が溜まることが問題になります。

それも皮下脂肪だけならともかく 内臓にも脂肪がつくとなると動脈硬化性疾患・高脂血症・高血圧・糖尿病などの頻度を高めてしまいます。 脂肪肝は 生活習慣病の危険因子となるというわけです。肝臓が一晩に代謝できるアルコール量には限度があり それを超えてしまうと肝障害を引き起こします。 肝臓は 回復の速い臓器なので 休肝日を儲け肝臓をいたわることが 肝疾患の予防となります。

また 過食や運動不足による肥満が原因となる脂肪肝も急上昇していて これは 食生活のアンバランスから起こると言えます。中でも 果糖・蔗糖の摂取過多は確実に脂肪肝を発生させます。 これらは 非常に吸収が良くて 肝臓で脂肪として貯えられます。

果糖とは 果物に含まれる糖分なので 脂肪肝の心配のある人にとっては 果物の摂りすぎや 果汁100%ジュースの多飲も注意が必要と言えます。 果物は ビタミンCなどのビタミンや食物繊維が豊富なのですが この場合はほどほどにしておきたいものです。

ウィルス性肝炎
ウィルスによって起こる感染症の一種で ウィルスの種類によって A型・B型・C型肝炎などという名前がついています。 症状によって 急性のものと慢性のものに分けられます。

� 急性肝炎
一般に良性の病気で 発病から2~3ケ月で回復します。 しかし ごく一部に急性肝炎が悪化し 死に至る「劇症肝炎」がみられます。

� 慢性肝炎
発病後6ケ月以上炎症が続いている ウィルス性肝炎です。 慢性肝炎になりやすいのはC型肝炎の人です。それと 体内にB型・C型ウィルスを
持っていながら発病していない「キャリア」と言われる人たちも含まれます。 慢性肝炎は 本人の自覚がないまま 何年、何十年もかけて肝硬変
さらには肝臓癌に進むこともあるのでしっかりとした管理が必要です。
薬剤起因性肝障害主として風邪薬・痛み止め・抗生物質などが原因でおこります。 まれには ビタミン剤・消化剤・アレルギー治療薬が原因となることもあります。

肝臓を守る食事
肝臓の働きが悪くなると 糖質をはじめとして蛋白質・脂質の 体内での代謝異常がおこるため それを補うためにも十分な栄養素の確保が必要となります。

� 一日3食 朝食は必ず摂る
肝臓に必要な 栄養を補うためには 一日に必要な栄養素を3食過不足なく摂ることが必要です。一日を2食にしたり 間食(菓子・ジュース)ばかりでは肝臓に負担をかけ 栄養バランスを崩します。 それに加えて 加工食品の摂りすぎは 中に含まれる「防腐剤・着色料」などの添加物の解毒を肝臓がしているため 肝臓に過大な負担をかけることになるので注意しましょう。 栄養素をまんべんなく摂るためには 皿の数を増やし主食・主菜・副菜を揃えるようにします。それは糖質・蛋白質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維をまんべんなく摂ることへと繋がります。 それに加えて 下記のことが肝臓を守るために必要になります。

� 良質の蛋白質を摂る
肝臓も肝臓内で働く酵素も蛋白質で出来ています。 消化吸収のよい 良質の蛋白質(特にプロテインスコアの高い蛋白質)を摂ることが大切です。

卵・牛乳・肉類・魚介類などの動物性蛋白質と 大豆や大豆製品(豆腐・納豆など)・ごはんや豆類などの植物性蛋白質を両方 適度に取り入れる工夫が必要です。

これらを十分摂ることは 必須アミノ酸を過不足なく確保することに繋がります。 肝臓病では タンパク質の消費が増大し また合成障害などで体内での蛋白質の産生や吸収も低下するため 体内で再構築が容易におこなわれる必須アミノ酸を摂る必要があります。

� ビタミン・ミネラルを十分に摂る
肝臓は代謝活動の中心で 複雑で活発な活動をおこなっていて 大量のビタミン・ミネラルを代謝のために必要とします。ビタミン・ミネラルの不足は 代謝障害は勿論 細胞の老化・肝臓の萎縮・再生不良につながります。 特に 糖質・脂肪の代謝に関係するビタミンB類を十分に摂ることは必要です。 また B 類と共にビタミンCは肝臓で解毒の働きを助けることに必要です。 またビタミンCは肝臓を襲うウィルス性肝炎・血清肝炎を防ぎ 回復させる働きも強いので 一日に必要な量よりたくさん摂って効果を示します。

脂溶性ビタミンの ビタミンA・E・D・Kも必要なビタミンで ビタミンAは肝臓の膜と細胞を保護しています。
不足は変性作用や 発ガン物質の作用を受けやすくなります。

ビタミンEを摂ることは 肝臓の細胞や膜に 代謝を妨げる過酸化物質が発生して肝臓が変性するのを防ぎます。
ビタミンD・Kの不足は 肝臓での代謝が滞り代謝異常を生じさせます。

ミネラルの中でも 亜鉛は活発な肝細胞の再生に必要です。 セレンは肝細胞が酸化されて壊れるのを防ぐ働きをします。 この二つのミネラルは 肝臓を弱らせる有害物質を抑える働きもします。

� 脂肪は控えめ質を考えて!
肝臓病では吸収障害・利用障害をおこしているため 脂肪は控えるように言われてきました。 しかし脂肪は 1g で9kcal のエネルギーを産み量が少なくても十分なカロリーが補えるという意味で重要で 糖質・蛋白質の代謝異常が起きたときには肝臓の負担を減らしてくれる役目も果たします。

脂肪は 総エネルギーの20~25%を 一日で通常よりやや少な目の40~50g くらい摂るようにします。 そして それは植物性の油や魚油の多価不飽和脂肪酸の多いもので摂るようにします。 ただし この不飽和脂肪酸は 同時に過酸化も受けやすいためこれは細胞障害・細胞機能障害に繋がるのでビタミンEも同時に摂るようにすることも必要です。

� 炭水化物を適度にとりいれる
糖質は 生活するエネルギー源として必要なものです。 中でも ごはん・麺類・パンなどの炭水化物は 適度に摂るようにします。(御飯なら毎食軽く一杯くらい) 一日のエネルギーは標準体重を維持する程度とする量がのぞましいので 糖質は 蛋白質・脂質とのバランスを考えて摂るようにします。糖質食品の中でも 果物はビタミン確保のためにも 一日100~200gは必要ですが 菓子は 余分なエネルギーとなるので 摂りすぎに注意が必要です。

肝臓病では 糖質の代謝異常により 肝臓のグリコ-ゲンの減少がおこり それを補うためにアミノ酸からの糖新生が増え筋肉の減少もみられることになります。 そのため 十分な蛋白質摂取と同時に 糖質の確保が必要となります
􀀀 塩分を控える生活習慣病の予防として 減塩食にすることは重要ですが 肝臓の病気の中でも 特に肝硬変の場合 塩分の制限が必要です。 肝硬変ではアミノ酸代謝異常が起こります。 この状態では 塩分・水分の過剰摂取が腹水をおこし肝硬変の状態を悪くします。 このような状態では 日頃の塩分量をかなり控えめにすることが特に必要になります。 腹水のある場合は 水分の制限も必要です。

� 禁酒
アルコールと肝臓との関係の深さは上記のとおりで アルコールが原因で 肝臓障害がある場合は勿論 肝臓に障害のある場合も断酒が必要です。 肝臓病予防のためには 適度な飲酒量を守る習慣が大切と言えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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