3大栄養素 ミネラル
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胃腸病と食事の関係
管理栄養士 鈴木久美子の「健康の泉」   



その種類と働き◆欠乏症

ミネラル(無機質)は、私たちの体内に構成する成分として4%くらい存在します。
体内では・・・
􀀀 骨や歯の成分として
􀀀 血液や体液の浸透圧・酸アルカリ平衡・水分平衡の保持
􀀀 血液やホルモン・酵素を構成する成分として
􀀀 血液の凝固・酵素反応と関係する
􀀀 神経や筋肉が機能するため
などの働きをしています。

ミネラルには・・・
カルシウム(Ca)・リン(P)・マグネシウム(Mg)・ナトリウム(Na)・カリウム(K)・塩素(Cl)・鉄(Fe)・銅(Cu)・亜鉛(Zn)・セレン(Se)・マンガン(M
n)・ヨウ素(I)・コバルト(Co)・イオウ(S)・モリブデン(Mo)・クロム(Cr)などがあります。

カルシウム(Ca)
カルシウムは、体内に成人で1kgくらい存在し、99%は リン酸カルシウム・炭酸カルシウムの形で 骨や歯の成分として存在します。残りは血液をはじめとする体液・筋肉・神経などの組織に存在しています。

カルシウムが不足すると、骨や歯がもろくなってしまうことはもちろん、血管を老化させ動脈硬化や心臓病・脳卒中などの病気の引き金にもなります。 血液中には一定のカルシウム量が必要で、心臓や脳の働き・筋肉の収縮・ホルモンの分泌・血液凝固など 生命維持にかかせない働きをしています。 血液中のカルシウムが減ると、骨からのカルシウムがそれを補うために溶けだし骨内のカルシウム量が減少します。

カルシウムは乳製品・小魚・海藻などに多く含まれています。 吸収は年齢や体質によってもちがいますが、食品によっても違いがあり牛乳では50%、小魚では約30% 緑黄野菜や海藻では約20%となります。 カルシウムは、リン(P)の摂取量との関係が深く、Ca:Pの比が1:2~2:1の間で吸収が良く、その範囲を超えてPの摂取が多いと吸収が悪くなります。(加工品などからPを摂りすぎないように!)それ以外にも、カルシウムは腎臓で作られる活性型ビタミンDで吸収が促進されます(食品中からのビタミンD摂取や紫外線に当たると作られる)
また、骨に体重がかかることでカルシウムの吸収は促進されるので、適度な運動はカルシウムの吸収に役立ちます。

女性ホルモンとも関係があり、閉経後は骨からカルシウムを溶けることを妨げていたホルモンが減少し、骨からの流出が進みます。 蛋白質の摂取量や(蛋白質が適度だと促進し、過剰すぎると排泄量が増える)食塩の摂りすぎ(低下)によることでも吸収率は変わってきます。 また夜間は、血液中のカルシウムレベルが低下することから、カルシウムの吸収がよくなると言われています。 日本人のカルシウム摂取量は、増えてはきましたが欧米諸国と比べると低く、必要量を満たすには努力が必要な状態です。

カルシウムは、毎日十分に摂ることを心掛けたい大切なミネラルのひとつです。

多く含まれる食品 牛乳・乳製品・小魚・干しエビ・海藻類・ゴマ・切り干し大根

� リン(P)
成人の体内に約0.5~0.8kg含まれます。90%は、リン酸カルシウム・リン酸マグネシウムの形で骨や歯の主成分となります。 また、それ以外に血液中ではリン酸塩として血液の酸やアルカリを中和する働きをします。リンはリン酸・核酸の成分でもあります。

ビタミンB1・B2と結合して補酵素となる働きもあります。また 糖質代謝を円滑にします。 ATPなどの高エネルギーリン酸化合物を作り、エネルギーを貯えます。

リンは、肉・魚・卵など 日常の食品中に十分含まれており、通常の食事をしていて不足したり欠乏症になる心配はありません。 ただし、ビタミンDが不足すると利用率が低下します。 また、リンの摂取量が多すぎるとカルシウムの吸収が悪くなるのでインスタント食品や加工食品の摂りすぎには注意が必要です。

多く含まれる食品 牛乳・乳製品・卵黄・肉・魚

マグネシウム(Mg)
体内に、約30g存在しその70%はリン酸マグネシウムとしてカルシウムと共に骨や歯に存在します。 それ以外は、筋肉・脳・神経に存在し、筋肉にはカルシウムの3~5倍含まれています。 マグシウムは、細胞内に存在し不足すると骨組織から放出されます。 マグネシウムは骨から放出されるとき、マグネシウムの5倍のカルシウムも一緒に放出されるため余分なカルシウムが細胞内に進入して筋肉を萎縮させます。

つまり、骨粗鬆症の予防には、カルシウムと一緒にマグネシウムを十分に摂取することが大切だということです。
また、慢性的な摂取不足は、虚血性心疾患を引きおこすことや、マグネシウム投与によって高血圧・動脈硬化・糖尿病などの症状が改善されることが解り、このような病気の予防のためにも必要なミネラルだとされるようになってきています。

マグネシウムは、ふだんから食事をきちんと摂っていると不足する心配はありませんが、最近はマグネシウムが含まれる”穀物や豆類・海藻”などの摂取量が減り、現代人には不足しがちなミネラルです。 マグネシウムの吸収率には個人差があり、ストレス・過食・リンの摂取不足などによって尿中排泄量が増加します。マグネシウムは過剰に摂っても腎臓から排泄されるミネラルです。

多く含まれる食品 魚肉類・バナナ・ほうれん草・ごま・大豆・ワカメ・昆布

ナトリウム(Na)
体内に約100g 含まれます。塩化ナトリウム・重炭酸ナトリウム・リン酸ナトリウムとして体液中に存在します。 細胞の外液の、浸透圧を一定に保つために調整する働きをします。 また、体液のアルカリ性に保ったり筋肉・神経の興奮を弱める働きもします。 日本人は、食塩の摂取が多く、高血圧・動脈硬化の原因となることからナトリウムはむしろ控えるようにしなければなりません。 カリウムを多く摂るとナトリウムの排泄が増し、過剰による害を防ぐことができます 普通の状態で欠乏することはありませんが、ひどい下痢や嘔吐・発汗のあとでは不足することもあります。

多く含まれる食品 食塩・醤油・味噌・塩から・佃煮・ハム・ソーセージ・蒲鉾・インスタントラーメン

カリウム(K)
体内に約200g含まれます。 血球・細胞の内液に多く含まれます。 ナトリウムと共に、細胞内の浸透圧の保持 酸アルカリ平衡の保持に重要な働きをしています。 ナトリウムを排泄する働きがあり、カリウムを摂ることで高血圧などの予防に役立ちます。 水分の摂りすぎにより、排尿が増えたときなどカリウムも一緒に排泄されてしまうので、十分に摂ることが必要です。 カリウムは、生の野菜や果物・芋・豆類・海藻などに多く含まれますが、水に溶け出てしまうので茹でる・煮るなどの調理によって、かなり失われてしまいます。

多く含まれる食品 バナナ・スイカ・リンゴ・柿・栗・セロリ・ジャガイモ・薩摩芋・小豆・牛乳・昆布・ワカメ・鮎

鉄(Fe)
鉄は、血液との関係が深く 鉄不足による貧血はよく知られています。 成人体内に約3~4g含まれ、赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビン・肝臓のフィリチンに含まれます。 細胞内で酸化に働くチトロームなどの酵素の成分にもなっています。 食品から摂取された鉄は、小腸から2価の鉄イオンとして吸収され、血液中に送り出され利用されます。 一日に必要な12gを摂るためには、日頃からの努力が必要で、鉄を含む食品を心掛けて摂るようにしたいものです。 レバーやカキなどの動物性食品に含まれる鉄は、摂取量の15~20%が体内に吸収されますが、海藻や野菜などの植物性食品に含まれる鉄は2~3%しか吸収されません。 鉄は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収がよくなりますので、植物性食品は鉄の吸収をよくするためにはビタミンCや蛋白質と一緒に摂ることが吸収率アップに繋がります。

多く含まれる食品 レバー・肉・卵・マグロの赤身・プルーン・レーズン・葉菜類・ゴマ・焼きのり

銅(Cu)
体内に約75~150mg含まれています。 体内に広く各種の臓器に分布して存在し 酵素の成分にもなっています。 銅は、腸管からの鉄の吸収を助け骨髄でのヘモグロビン生成のとき鉄の利用をよくする働きをしています。 貧血の予防や治療に鉄とともに必要です。

多く含まれる食品 レバー・ココア・チョコレート・カキ・蟹・エビ・ゴマ・大豆

亜鉛(Zn)
体内に約2g含まれます。 亜鉛は広く細胞全体に存在し 働きは DNAや蛋白質の合成に関与しています。
血漿中の亜鉛は、ほとんどアルブミンなどの蛋白質と結合していて免疫機能に関係します。

また、糖代謝にも必要でインシュリンの合成や作用発現に必須のミネラルです。 亜鉛の所要量は、鉄と同じくらいとされていますが、尿や汗の中に排泄される量は、鉄の十倍も多くダイエットや運動によって不足しがちになります。 また加齢によっても 尿中の排泄量が増えます。 亜鉛は、DNAや蛋白質合成に関係している細胞分裂に必要なため、不足すると免疫機能が低下します。 亜鉛は、植物性蛋白質と一緒に摂ると吸収が促進されます。

多く含まれる食品 カキ・レバー・ウナギ・カシューナッツ・たらこ・ホタテ・アーモンド・高野豆腐・さんま・ささみ肉

セレン(Se)
セレンは、抗酸化作用がありビタミンEと一緒に働くとこの作用がより効果を発揮します。 また 癌の抑制作用効果を持ちます。

体の細胞の膜などには不飽和脂肪酸がふくまれますが、不飽和脂肪酸は酸化されやすいため、酸化によって体に有害な過酸化脂質を作ってしまいます。 この過酸化脂質は、老化を早め、癌や動脈硬化の原因となるのですが、このときセレンとビタミンEがあれば これを抑制してくれます。 また、体内では水銀・カドミウムなどの公害物質と結びつき働きを軽減するなど、体に有害な物質から体を守ります。 ビタミンQの生成にも関与します。 日本人の通常の食事には、一日に約100μgほどの摂取があり不足の心配はありません。
反面、セレンは摂りすぎると毒性が現れ中毒を起こす心配のある成分です。

多く含まれる食品 わかさぎ・いわし・かれい・ホタテ・牛乳・リンゴ酢・ネギ・ビール・カキ・たら・牛肉・玄米

マンガン(Mn)
体内に約200mg 含まれます。 骨にはたくさんのミネラルが含まれており、カルシウム・リンはよく知られますがマンガンも骨の石灰化に必要なミネラルです。 また関節を丈夫にする結合組織の補酵素としての働きもあり、成長期には発育を促進するために不可欠です。 糖質・脂質・蛋白質の代謝に働く酵素の成分でもあり、エネルギー作りや蛋白質の体内合成に関係しています。 マンガンは全体として、細胞の活力を高める働きをしており、不足すると骨などの発育不全・傷の治りが遅い・インスリンや甲状腺ホルモンの合成不良・エネルギー不足による不活発などがおこります。

多く含まれる食品 玄米・大豆・アーモンド・抹茶・カキ・カシューナッツ・干ひじき・納豆・小豆・さつまいも

ヨウ素(I)
体内に約20~30mg くらい存在します。 甲状腺ホルモンの成分としてや、発育を促進・エネルギー産生を高めるなどの働きをしています。

体内にある、ヨウ素の約半分は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンのチロキシンとトリヨードチロニンを作る材料になります。 これらのホルモンは、交感神経を刺激して蛋白質や脂質・糖質の代謝を促進します。 不足すると 体がだるい・鈍いなどの症状が現れたり 子供では発育が遅くなったりします。
海に囲まれた日本では、海草類を摂っていれば不足の心配はほとんどありません。

多く含まれる食品 レバー・肉類・魚介類・乳製品・納豆・もや

多く含まれる食品 昆布(だし汁も含む)・ワカメ・イワシ・サバ・海苔・かつを・ぶり・寒天

コバルト(Co)
体内に、約1.5mg 含まれます。
コバルトは ビタミンB12 を作る材料としての働きが中心となっています。
体内に存在するコバルトの15%は、ビタミンB12 を構成する成分として存在し、悪性貧血の予防 神経の働きの正常化、バイオリズムの正常化などに働いています。

多く含まれる食品 レバー・肉類・魚介類・乳製品・納豆・もやし

イオウ(S)
イオウは含硫アミノ酸に含まれ、体内でも蛋白質やアミノ酸と結合して存在します。 健康な毛髪や皮膚・爪を作るために重要な成分です。
軟骨・骨・腱を作る成分にも含まれています。 また ビタミンB1やパントテン酸と結合して補酵素となり、糖質や脂質の代謝に働いています。
これ以外にも、有害なミネラルが体内に蓄積されるのを防いでくれたりもします(解毒)。

多く含まれる食品 魚介類・肉類・卵・牛乳

モリブデン(Mo)
肝臓や腎臓の中の、いくつかの酵素を助ける働きをしています。 また、糖質や脂質の代謝を助けたり、鉄の利用を高めて貧血の予防をします。
そのため、鉄欠乏貧血の人には必要といえるミネラルです。 また尿酸の代謝にもかかわっています。

多く含まれる食品 牛乳・乳製品・納豆・豆類・穀物・レバー

クロム(Cr)
体内では、クロムの中でも3価クロムが重要な働きをしています。 3価クロムは、糖質や脂質の代謝を良くする働きがあり、糖尿病や動脈硬化と
の関わりで注目されています。 これは、クロムが腸内細菌からGFTというクロム化合物に合成され、インスリンの作用をよくすることから、 糖尿
病を予防し、血中のコレステロールを正常範囲に保ち、動脈硬化や高血圧を予防すると考えられているためです。

多く含まれる食品 野菜・穀類・海産物・肉・魚


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